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休学の報告
タイトルの通りですが、2020年3月をもちまして東京大学大学院 理学系研究科 物理学専攻の博士課程を休学することにしました。 休学に必要な事務手続きの詳細は「大学院を休学します(事務手続き編)」に書きました。 この記事では、どのような理由で休学を決め、これからどうしていくつもりかを書きました。
理由
理由を端的に言うと就活のためです。 去年度末に修論を書きながら、「自分が本当にやりたいことは物理なのだろうか」ということを考えていました。 自分の研究生活を振り返ると、やっていて楽しく、時間を費やしたのはプログラミングそのものでした。
そもそも過去の記憶を辿ると、昔から何か細々したものを作ったり、複雑な機械の動作や構造を理解していくのが好きでした。 いつしか受けたゼミで先生が使っていた言葉を借りると、おもちゃがチャカポコと動くことにどうしようもなく興味を惹かれるのでした。 物理はそれなりに楽しいけれど、どうしてもチャカポコが足りない。 やはり自分で作らなければどうしようもないと悟り、エンジニアとして生きていくことを決意しました。
インターン、そして就活
エンジニアへ転身する決意を固めたのが修論が終わった直後の3月で、そこから研究室での活動を少なくして就職活動を始めました。 宇宙開発もののSF小説が好きだったことから、人類の宇宙開発に貢献したいという思いがずっとありました。 いまこそその思いに従うときだと、宇宙開発を行っている企業を探し始めました。 また、理不尽なルールに従うことが大嫌いなため、そのようなことが多そうな大企業は避けてベンチャー企業に絞って就活を行うことにしました。
しかしベンチャー企業は実力主義が強く、工学的な実績のない自分にはかなり不利な挑戦となることは明らかです。 そこで可能性を高めるための現実的な方法として、インターンを行って実績にする、あわよくばその会社にそのまま入社するということを考えました。
折良く小型人工衛星の開発において実績をあげているA社がインターン募集を行っており、そこに応募したところ無事採用されました。 5月から始めて11ヶ月間インターンとして業務を行い、それなりの成果を出してきました。 ちょうど現在のプロジェクトが成果を出してまとめられそうな時期なため、 A社でのインターンを終えて、別な会社に就活を行うこととしました。
そして休学
インターンを終えるタイミングでちょうど研究室の仕事が終わるため、自分でも区切りをつける意味で休学をすることにしました。 退学をしなかったのは収入源が確保できるまでは学生の身分を失うリスクが大きいと判断したからです。 どこかの企業に入社が決まったあかつきには、退学したいと思います。
研究生活での学び
修論を書いている最中に自分の適性を考えたりしたのは、ひとつには修論がなかなかうまくいかずに精神が荒れていたからです。 その原因の一部は自分にモチベーションがあまりなく集中できなかったことがありますが、 指導教員との関係がうまくいかずコミュニケーションが不十分であったことも大きな原因だと考えています。
結果として修論のクオリティが十分な水準に達しているかどうかについては、自分でも不満足なところがあります。 しかし仮にもう一度やり直せたとしても今以上のクオリティになるとはあまり思えず、 どうにか修士号はもらえたので特に文句は言わずに、自分の実力が反映されたものとして受け入れています。
とはいえ研究室での活動を通して、他人と仕事をする際に重要な姿勢というものを学ぶことができました。 自分が指導教員、研究室のスタッフや先輩・後輩の院生たち、またインターン先の社員さんと共に仕事をしてきて、 円滑な人間関係を構築するために重要だと感じたことをまとめました。
- 人格を否定しない
- 発言に一貫性をもつ
- 常にフレンドリーでいる
1.人格を否定しない
科学の分野では論文の執筆や発表資料の作成において、共著者から指摘をコメントをもらいます。 そのさいに「内容についての批判と、自分の人格批判と読み替えない」というのがコツとして喧伝されることがあります。 指摘される側が心得として覚えておくのはいいのですが、指摘する側が好き放題言うための言い訳のように使われることがあります。
また自分が指摘をする側のときも案外難しく、内容が客観的であっても話し方や言葉遣いで相手を威圧していることが往々にしてあります。 コメントをする場合は言葉のチョイスや言い方を含めて、自分の発言が本当に内容についての客観的な評価のみをニュートラルに伝えられているのかよく考えるべきです。
2.発言に一貫性をもつ
これをやってみてと言われて言う通りにしたところ、そんなことなぜやっているのかと怒られる、 ネットの記事でもたまに目にするエピソードですが、これが一番人間のモチベーションを破壊します。 指示をするならするで、最後まで一貫性をもちましょう。 自分はこれでかなりのモチベーションが失われたと思います。
3.常にフレンドリーでいる
持論ですが、高等教育に怒るという行為は必要ないと考えています。 仕事でもよほどクリティカルなことを除いて怒る必要性はないでしょう。 怒るという行為の原因は何か失敗をしてしまったからですが、失敗するのはもともとのコミュニケーションに不足があったからです。 十分なコミュニケーションがあれば失敗しそうな方針を選ぼうとするときに事前に回避したり、 失敗が明らかになりつつあるときもすぐに対策へと移行できます。
ではなぜ十分なコミュニケーションが取れないのかというと、大抵は怒られるのがいやだからです。 このように怒るというのはコミュニケーション不全の負のスパイラルを引き起こすため、 マネージメントの方法としては下の下にあたると考えています。 常にフレンドリーな態度を崩さず、間違いがを指摘したときもニュートラルに受け取られるように努力すべきです。
以上三つが研究室での三年間で学んだ、仕事をするうえで良好な人間関係を築くポイントです。 全部当たり前といえば当たり前ですが、これらの点を守ると心理的安全性が維持され、効率的に仕事ができると思います。
まとめ
研究室を非難するような内容になってしまいましたがそれは本意ではありません。 学生の面倒見のよい先生でもあり、いろいろと世話をしてもらうこともありました。 研究室を離れることにはなりましたが、円満に休学することができました。
これからは3年間の学びを生かしながら、就活や創作活動を行っていきたいと思います。 それでは。
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